CMようこ2

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菅野よう子×GRAND FUNK スペシャルインタビュー2

ー The Beatlesの"All you need is Love"のカヴァー。 なんといってもバンドのグルーヴがとても秀逸ですね
うん、タイコとかね
ー ドラムを担当してもらったのは、あらきゆうこさん(くるり、コーネリアス、スガシカオなどのレコーディング/ライブでも各方面アーティストからひっぱりだこの人気ドラマー、自身のユニットMiguとしても活躍)でしたね。あらきさんの印象は?
彼女は普遍的なドラムを叩く人だよね。時代を超えた感じ。バンドぽくもあり、クラシカルでもあり、、
なんともいえないキャッチーさがあるんだよね。
ー サビの♪All you need is love~、のあとのタラッタッタラ~というブラスのカウンターメロディが、
「カンカンカンカン」と管を叩いているような音に指し替わっているのが印象的です
これは映像のカット割に合わせてこうしたんだ。
ー この録音の時のディレクションのポイントは?
あらきさんはじめバンドの方々(ギター/清水弘貴、ベース/キタダマキ、コーネリアスのLiveメンバーと同じセッションメンバー)
は基本なんにも言う事なくて。もうこのメンツ呼んだ時点でうまくいくの分かってた。
ー "子鹿"
あ、これ田内さん(田内健弥監督、現エムワンプロダクション代表取締役)のね。
これは化粧品のコマーシャルで、すごく多忙な時期の録音で、、ノーメイクすっぴんでスタジオ入ったら、
金橋さんに「化粧品の仕事なんだから口紅くらい塗ってきなよ」って怒られた(笑)
当時は私、企業に対してのサービス精神とか考えた事も無くて、そういわれて、はっとして、あ、これはサービス業なんだって(笑)
お客さんにしてみれば、たとえ曲のアガリは良かったとしても、なんだ?このねーちゃんって思っただろうな。
ー (笑)。たった15秒の尺に、現代音楽とコミカルなサントラの要素が絶妙なタイミングで集約された見事なアレンジですね
うん。。といっても現代音楽の勉強は全くしたことないんだよね。
これは映像と一緒に見てもらうとわかるんだけど、森に子鹿がぴょんと登場する、という不思議で可愛い映像の世界観に沿わせたアレンジです
ー "火祭りの踊り"
これ、すごい面々のミュージシャンに演奏してもらったね。
ー 豊嶋泰嗣さん(vl)、苅田雅治さん(vc)、今堀恒雄さん(g)、伊達弦さん(perc)そして鍵盤が菅野さん。
クラシック界の重鎮、スタジオ界の重鎮、ギター界の重鎮、そしてラテン界の重鎮が一同に会しての豪華な異種格闘技セッション。
そしてこのホイッホイッていうかけ声が現場にいたぼくらスタッフ(笑)。
こういった普段ならありえないセッションって、CM音楽の醍醐味だよね。
お互い一度も会った事無い同士が一時的にバンドを組んで、、こういうサウンド楽しいよね。
CM以外の他のジャンルでは中々出来ない事、演奏している方も楽しいと思うよ。
そう、あと私は現場のスタッフをしばしば録音に駆り出しますね、かけ声とか、ハンドクラップとかね(笑)
ー "Modern Line" でましたこの曲、、、
なんでこんな曲書けたんだろうね(笑)

ー ぜひこの機会に作曲者に聞いてみたいです(笑)
絵が、、、線が、こんなくるくるくるってなって、こんな曲になっちゃった。
ー ん?
なんていうかこういう場合、結構肉体派なんだよね、私自身が線になって踊り(体を使って線が踊るジェスチャー)、 そして曲になる、みたいな。
ー そうですか、、、こうした現代音楽然としたアレンジのもので、他にこんなキャッチーな曲を聴いたことないってくらい、
すごくとっかかりやすく、いつまでにも耳に残ります
そりゃすごいね。
Saxは清水靖晃さん(前衛/現代音楽の巨匠)一人による多重録音、譜面通りです。
確かに、私もこういうの他に思い浮かばないね、
自分では現代音楽という意識はなくて、現代音楽ってそもそもよくわからない。
現代音楽といってもいろいろあるとは思うけど、その一つに、メロディアスなものの否定から始まる作り方があるじゃない。
この曲は星座の並びを数学的に置き換えて、音階と音程に当てはめてつくりました、みたいなやつ。
私の場合はそういう作り方じゃなくて、あくまでメロディに主体性があるから、、だから残るのかな。
ー なるほど、この曲は沢山の賞にも輝いた名曲ですね、ソリッドで洒落ていて、全てが完璧にさえ感じられる素晴らしい曲。   
続きまして"Success Road"
ああ、これ懐かしい。WINDOMは随分いろんなシリーズやったなあ
ー ゴージャス・アーバン・ナイトライフ、みたいになってますね。。
菅野さんが作られるものは、可愛らしいポップスから、こういったなんていうか、、
あせくさい。
ー (笑)・・・ものまで様々ですが、やはり書いてる曲によって気持ちの面でのモチベーションの変化はあるんですか
あるね、この場合やっぱり男ゴコロになってるし
それも、そんな男ぜったいいないだろ、ぐらいの有り得ない理想の男性像を勝手に作ったりして(笑)、
そんな人になったつもりで書いてます。
この曲は違うんだけど、WINDOMは監督が外国人の場合が多くて、海外録音も多かった。
映画さながらの撮影、L.Aで道路封鎖して、夜中にヘリコプター何機も飛ばして撮影してるの観に行ったりしてね、
すごいかっこよかった。
人種の違うスタッフにもこの曲いい、と認めてもらえたのが結構自信になったかな。
ー "いちじよじ"
WINDOMの次がこれかいっ!
ー (笑)
この曲順は自分でもぶったまげる。
ー すごいなーと思うのは、ものすごく言葉(文字数)多いのにとてもキャッチーなメロディに落とし込めている事。菅野さんの真骨頂の一つかと。
この手のものだったらあと5、6曲は書けますよ(笑)
でもこれけっこういい曲だよね(笑)
でんこちゃんのキャラのイメージと、うちわで仰いでる感じと、
なかなかアレンジが、、、わ!(ウクレレの素朴な合いの手みたいなアレンジの箇所で)
忘れてるわけよ、こういう細かいところ、久々にきくと自分でやったのに笑ってしまうんだよね(笑)♪おら~はしんじまっただ~、みたいだね。

ー 歌もご自身ですが
いやー、、、、これ、あとで誰かがちゃんと歌ってくれる前提で、、、DEMOのつもりで歌ってるからね、
かっちょわりー!みたいな(笑)相当恥ずかしい、うわ、字余りだし。
ー "Ubique"、この曲すごくかっこいいです、オブジェにして美術館に飾りたいくらい。
監督とはどのような打ち合わせを経てできた曲なんですか
企業のショートフィルム用に作った曲。
攻撃的でアーティスティックな映像だったね。
真っ暗な、暗闇の中に、希望の兆しみたいなものが一筋みえて、、でもそれは霧の中で、、みたいなオーダーでした。
ー ああ、まさにそういう映像が頭に、、(笑)。なるほど、それでこの美しく独特な静謐感なんですね、
そう。こうした暗めの音楽はCMではあまり出来ないから、珍しい作品。
ー この音は?(後半、きれいな弦をジャラーンジャラーンとかき鳴らしているような音)
これはハープシコードかな。こういった音色に関してはいつも組んでいるシンセのオペレーター(浦田恵司氏、坂元俊介氏)
たちが素晴らしい仕事をしてくれるので、彼らがいないとやっぱり無理ですね。
ー "Blue Groovin'"
あ、これね!
ー これですよ。
Sax習いはじめた私の親戚がこのCM見て、これ吹きたいから譜面ほしい、って言ってきた(笑)
Master Cardのシリーズも沢山やってますね
ー CMは、母役の大竹しのぶさんが娘と念願の本場のジャズ・クラブにいく、というストーリーでしたね。
ぱっと聞き、Saxのジャズシズルに耳がいくのですが、よくよく聴いてみると、ジャジーなコード進行の前後や狭間にクラシックやサントラの要素や技法が詰め込まれていて、音楽的にはかなり高度なアレンジですよね
ははっ、全然ジャズクラブじゃないね(笑)
映画のラストとかで、よかったねー、とかいってるところで流れているみたいな。
ー グロッケンの使い方なんかもとても効果的で、可愛くもマジカルだと思いました。
まるでアントニオ・カルロス・ジョビン(ブラジル音楽の巨匠、Bossa Novaの創生者)。
・・をサントラ用にアレンジした、みたいなね(笑)
Master Cardって外資の企業のもので、やっぱり外資のものは演出のセンスが違うじゃない。
仕上がりにOKをだすのも外国の方で、外国でのオンエアがあるときは、ドメスティックなCMと比べると、
ちょっと作り方を変えてるかな。
バタくさい感じ、臆面ない感じ、明るくスカっとした感じ、というかね。
コツとしては「情」の部分を抜いていくような、そういった工夫をしています。
ー "赤い太陽"
これね。前田良輔監督の。
ー ボーカルは湯川潮音さん、独特な和のイメージがとても清々しくていいですね
♪もゆいよな~って熊本弁なのねこれ。熊本在住の方に実際発音してもらってそれを曲にしたんです
例えば大阪弁の場合でも、字面では理解出来ていても、実際現地の人がどういう風にしゃべるかって聞いてみないと、
細かいニュアンスがわからないじゃない?だから熊本の方の正確な発音をあらかじめ聞いた上で曲作って、
仕上がった後も「これでおかしくないか?」と確認で聞いてもらいました。日本語なんだけれど、不思議な響きだよね。
ー すごく丁寧な作られ方ですね。   話逸れますが、菅野さん歌舞伎好きですよね。歌舞伎のおすすめなポイントを教えてください
好き。ごく最近だけどね。
歌舞伎を観て、日本人てこんなにも明るくてサービス精神が旺盛ですごくコスモポリタンなんだ、って思いました。
一般的に日本人て暗くてまじめっていう通念があるじゃない。
でも歌舞伎みれば、きっちりしてる所がありつつも、ストーリー的にはすごくざっくりしていて、おばけがいけしゃあしゃあと出してきたり、エロかったり、終わりは余韻なんてものもなく大雑把だったりもする。おおらかなんです。
それをご飯食べながら観る、という文化に、すごく陽性のエンターテイメントを感じました。
日本人って底にあるものは実はすごく明るくて野太いんだな、っていう、そんな血が流れている自分を再発見できました。
ちなみに歌舞伎おすすめの演目は桜姫東文章、これあったら絶対観にいってみて。
ー "Life Is Dance"
最初この曲("オクラホマミキサー")を企画で持ってこられた時は相当びっくりした(笑)
民謡や童謡はうまく(コンテンポラリーに)アレンジできるものと、そうでないものがあるんだけど、これは上手にいったね。
よくぞこの曲を選んだよ。
ー 良くしていただいて、ありがとうございます。
Dメロもいいよね。バート・バカラックみたいだ(笑)
ー "New Moon"
畠山美由紀さんにぴったりじゃない、これ?(笑)
彼女自身はこういうタイプの歌はこれまで歌った事なかったみたい、でもこの曲歌ってみて、ド直球のポップスもこれからはいける!と思ったって言ってました。
このCMはプラチナギルドって外資のクライアントさんの仕事で、私たち日本人が作った英語曲が、ネイティヴの方たちにどこまで通じるかな?という疑念が最初あったのだけれど先方にもすごく評判良いみたい。よかったです。
先日、友人の結婚式に行った時に式場でこれ流れていて、いいじゃんこれ、、名曲!って思った(笑)
映像とのマッチングも完璧、なによりも一番すてきなのは、"頑張ってないように聞こえる"ところかな。
さらっとしていて力みがなく、映像に対して自然に添った、みたいになってるところ、上手くいっているよね。
ー 大好きですこの曲、確かに名曲だと思います
いいよね、これ。
ー "豹" AVONのCM、先述の"子鹿"の別バージョンですね
この頃ってよく撮影現場によく顔出していて、この撮影の時、本当の豹が現場にいたですよ。
豹ってすごく獰猛なのね、ライオンとかよりも。言う事も聞かないし。
で、そのとき動物プロが猿を一緒に連れてきてたのね、猿が同じ場にいるとたいていの動物は落ち着くんだって。
その猿は別に撮影されるわけでもなく、なにしているわけでもないんだけど。それで、撮影の待ち時間って暇じゃん、
だからその猿と暇同士ずっと遊んでたのね、そうしたらその猿が私にすごく懐いて手離してくれなくなった。。
お菓子かなんかの包み紙を私にくれたりするわけ。
で、それは私にプレゼントしてくれたんだ、と思って、その時はありがとーっなんて受け取ってたんだけど、
その後帰り際に、その猿からもらった包み紙、まあゴミだし、、とおもってポイって捨てたら、その猿が激怒しちゃった(笑)
本当にものすごい怒ってて、あれは申し訳ない事した。。。ちょっとトラウマ。
ー こころ優しい猿だったんですね。ときに菅野さんはよく動物と仲良くなりますよね、事務所でスズメと会話してるの見た事あります(笑)
そうね、精神的にちょっと病んでる動物を治すのは得意かな
ー んっ、いまさらっとすごいこと言いましたね(笑)
鳴かないカナリアを鳴けるようにしたりとか。
スタジオで飼われてたカナリアで、一度も鳴いた事ないコと20分くらい遊んでたら鳴き始めた。
あとね、、ちっちゃいころにいじめられてココロを病んでしまった末に、噛みグセがついちゃった犬がいてね、
その犬にはずっと好きなだけ手を噛ませてたの、もうこっちの手はボロボロになっちゃったんだけど、そしたらもう噛まなくなった。けっこうそういうのあるよ。
ー "Red Swingin'"
あ、プラウディアね。
これ洒落てるよね。プラウディアってちょっとだけ大人向けなんだよね。
これも監督は田内さんかな。
田内さんの撮る絵というのがいつもすごく外国っぽくて、ハイカラなかんじがして好き。
ー 豊かでハリのあるブラスアレンジがとても素敵ですね、ブラスアレンジ作る時の工夫などありましたら教えてください
中学時代にブラスバンド入ってたから、ブラス吹きの気持ちは分かる気がするのね。
ブラス吹きの立場になってみると、この世の中にはブラスにスポットが当たる曲が少ないと思うの。
だからブラスの曲書くときはとにかく吹いていて楽しい、演奏している側が楽しい曲を、と思ってやってる。
ー "The Secret Magic"
これかっこいいね(笑) なんでこんな洒落た曲になったんだっけ?
ー 白ホリにモデルさんが出てきて、スチール撮影をしているような映像でしたね、監督は能見英子さんでした。
そうだそうだ、女性の監督さんだったんだ、あんまりいないんだよね、女性監督。
すごくオシャレな監督だったんだ、それで監督その人自身に書いたような曲。
私、結構そういうことしちゃうんだよね。結果的に映像にはその監督の人とナリが表れるわけだからいいんだけど。
ー "悲愴" ベートーヴェンの曲ですね、このメロディを奏でている楽器は?
オンド・マルトノだね
ー ストリングスの厚みもしっかりあって、荘厳だけど、温かみのある美しいアレンジですね
オンド・マルトノの表現力がとにかくすごいよね。
弦は8・6・4・4・2(24人編成)か、6・4・2・2・1(15人編成)くらいかな?
これ企業広告だったのね、つまりは企業自体の代表作となるわけじゃない?
その企業で働く人たちにとっても、自分の会社はすばらしい、という、
よすがとなるもの、、、ウチの会社最高!ってやっぱり思ってもらいたい。
だからしっかり丁寧に作るね企業広告は。校歌作るみたいなもんかな。
ー 読後感の何とも言えない引きずるような余韻が気持ちいいです
菅野さん幼少期はクラシック聞かれてた?
ううん、全然。 うちにレコードほとんどなかったからね。
唯一あったレコードがガーシュインの「パリのアメリカ人」。
この"悲愴"も曲の一部分しか知らなかったので、金橋さんにソナタの譜面買ってきてもらって(笑)そのピアノ譜から起こしました。
CMって、例えばこの曲をこんなアレンジにしてみよう、なんていういろんなアイデアをプロデューサーや監督達と出し合ってカタチにしていくことも多く、そうしたアイデアが私にとって刺激的。
そういうのって他のジャンルではあり得ないよね。
ー 菅野さんはどんな球でも絶対にヒットにしてくれるので、ぼくら制作陣にとってこれほど心強いことはないです。
だからあとは僕らの投げる球にかかっているというか。
はは、そうだね。
ー "ミテのうた" 菅野さんの地元、宮城の?
これ多分みなさんしらないでしょ(笑)
どこにも私が作ったって公表してないはず。
ミヤギテレビで明け方、その日のテレビが始まる時に毎日1回流れているそうなんです。
宮城県民はみんな知ってるらしい(笑)。かわいい絵がついてるらしいんだよね、私それまだみたことないんだけど。
ー 素敵な地元貢献ですね。

"蜂"
これもAVONの別バージョン。
プニウニニ~ってのが蜂のイメージなのね。
「蜂」と「豹」と「子鹿」の3部作でした。
ー "Remember Me"
旭硝子、これいい曲だよね
ー 監督は石川寛さん、歌は及川リンちゃんですね、この曲はどういった部分にフォーカスして書かれたんですか
うん、このリンちゃんの歌の気だるいような、、、
ー 無防備というか、
そうそうそう、、はだかーっみたいなね。
旭硝子のCMなのに、なぜかティーンエイジャーの少女が主人公で、映画っぽい造りになってて、
青臭さ、主人公の若さ、青春、旭硝子の若さや透明感なんかを重ねてみた。
あえて打ち込みで完成させたリズムも含め、そんなところを意識して書きました。
ー "Maria"
これは、直前に映画用にチェコ録音したものを聞いた監督がこういうの作って、と。
ー ものすごいコーラスと音像ですね、チェコ録音の話を聞かせてください。
チェコのときは教会で録ったの。コーラスは全て男声カウンターテナー(女声域にもおよぶ男声の中で最も高くパート、日本だと米良美一氏が有名)ばっかり集めてね、Saxはダビングで清水靖晃さんかな。こういう録音って編成も珍しい上に、1発で録らないと直しきかないから大変だった。
というのは、教会だからね、録ってる間に外でカラスがカーって鳴いたり、車がブーって走ったら終わり、
日曜日のなるべく静かな時間帯に録ったんだ。
そのときチェコまで連れていったエンジニアに、CMでも同じ世界観を再現してもらったんだよ。
ー "美しい明日へ行きませんか"
YOSHIKA、うたうまいよねー。
ブラックミュージック系のVocalistは、私の中では珍しいかな。
ー 深淵な感じの曲でとっても素敵です
色っぽいよね。 "キレイなお姉さんは好きですか?"の流れだよね、このCM。なんかすてきにエッチなかんじ。
ー "My Love" この曲ぼくの周りでもとってもファンが多いです
これ渋いね。
ー 後半、リズムが入る手前のボーカルKaleb Jamesさんのロングフェイクの「間」と、腰にくるグルーヴが、、もう・・たまりません(笑)
(その部分聞きながら)ははっ!(笑)そう、この曲はここがやりたくて書いたようなもん。
どんな曲でもやっぱり、"ここを聞かせたい"っていうのがあるんだよね。
こんな歌、絶対私には歌えない。無理、こんなロングトーンに独特のヴィブラート。
これデモる時はほんとひっくり返りそうになるくらい大変だった、
アーハァ~~~~・・・あー!もうだめ!助けて誰かー、みたいな(笑)
ー 菅野さんの音楽にはあまりブラックミュージック系の作品多くないですが、
たまにお願いすると、驚くほどかっこいいの仕上げてくれますよね。
うん、そんなに下手じゃないと思うよ(笑)
私の中にはブラックミュージックの血は流れてないと思うんだけど、以前ニューオリンズに行った時に(地元の黒人の方々の演奏見て)ぶったまげたんだ、、ビートとかね。
これは私が持ってないもの、かなわない、という思いと、すごい憧れる、というどっちの思いもあるんだ。
すごく豊かな世界だよね。そうえいば18歳くらいの時、初めてニューヨーク行って訪ねたのがハーレムだった。
英語もろくすっぽ喋れなかったんだけど一人でハーレムの劇場行ってね、地下鉄乗ってると途中からどんどん周りが黒人ばっかりになってきて、百何十丁目に来たあたりではもう白っぽいの私だけ、みたいな。
劇場ではミュージカル観たんだけど、上映中にお客さんが舞台に向かって「Oh, Yes!」と声かけまくるわ、立ち上がって踊り始めるわ、トイレの前ではおばちゃんたちすごい剣幕でワイワイガヤガヤ「さっきのショーはなんのかんの・・・!ちょっとアンタもそう思うでしょ!」ってわたしにバーンと振ってきたり(笑)。そういうの見てしまうとね、、もう文化の根本が違うというか。エネルギーが違うな、って思ってしまう。
ー 誰かが言っていたのですが、ブラックミュージックはフォルテシモの高さが他の音楽と比べて全く違うと。
なるほどね。肉体の限界を使うような音楽の表現だよね、でもすごく憧れてしまうんだ。
ー "奇跡と退屈" 詞を書かれたのは、今や音楽シーンのみならず文芸界でも大活躍の菊地成孔さん、ボーカルはこなかりゆさん、当時このカルピスウォーターのCMはとても話題を呼んで、シングルCD化もされました。
これは作冒頭イントロ部分のアレンジ私がやったんだけど、歌以降は菊地くんと茂木くん(現グランドファンク取締役社長)が担当して伸ばしてくれたんだよね。
私と彼らのディレクションの違いを楽しんでください。
ー そうだったんですね、確かに、冒頭は菅野さんぽく、以降は男っぽくワイルドでザラっとしてて、ロックぽい。
茂木さんは近田春夫さんのディレクションに影響を受けた、と聞いた事があります
近田さんのディレクションってどんな感じなの?どういう点が私と違うの?
ー そうですね、近田さんの現場は、、、
例えば、これはロックな感じの曲の録音時でしたが、ギタリストがちょっとミスタッチした時、厳密にいうとコードを鳴らしたときに予期しなかったプーンという音が同時に鳴ったんですが、それ聞いた瞬間に「うぉーやった!ラッキー」と飛び上がって喜んだり、「そのジミヘンみたいな感じサイコーっ」と言っては、スタジオの中をちょこちょこと動き回り、仕舞いにはミュージシャンのガラス越しに踊りだしたり。。
これは菅野さんもそうだと思うのですが、ミュージシャンの気分を乗せて、演奏録った後に、間髪入れずにトークバックでコメントとディレクション入れる、そのわずかな間のスピード感が限りなく俊敏だと思います。
なるほどね、すごく分かる。確かに日本での録音においてはすごく大切なことだよね
そう、その"一瞬"(演奏した後の間)がすごく大事で、その一瞬の間の微妙な長さによって、
ミュージシャンがすごく不安になってしまったりする、不安な気持ちに陥るとパフォーマンスが落ちてしまうからね。
アレンジャーにも色んな人がいて、色んなやりかたあるね。
とある巨匠は、すごくかっこいいアレンジを書くのに、
現場の録音では、演奏が間違ってようがなにしようが一回で「はいOK、終わり」としてしまうと。
完璧な理想を目指そうとしても100点に到達するのはどうしても不可能で、
そうなると何度も自分の曲聞くのが嫌になっちゃうんだって、私はその気持ちもわかるな。
ー 近田さんの場合は、その人の実力の最大限を引き出す事に力を注ぎ込んで、
そうした結果、飛び出してきたテイクがベスト、のような、
そういったやり方に比重を置いているようにぼくには見えるのですが、菅野さんの場合は、
そういった側面がありつつも、同時になにか、彫刻を彫るかのように、完成度を研ぎすませていくようなやり方にも見えます。
そうかもね。私の場合は(アレンジを書いた時点で)はっきりしたカタチというのは見えているから、ディレクションしながらそれに近づいていく、
だからなにが出てくるか分からないって事はないし、しかも、堀り出すまであきらめないからね(笑)
ー "GREEN" でました、先ほども話にでた韓国での。。
あ、私、一昨年に韓国で公演やった時にちょっと韓国語覚えたから今はじめて分かったんだけど
これ歌詞"月~"って歌ってる(笑)
ー そういえばステージで流暢に韓国語喋られてましたね、びっくりしました。
なんといってもこの歌の人、本当に素晴らしい声だったね、忘れられません。
Mixでけっこうリバーブ深くかけてるから分かりづらいんだけど、
喉の作りが日本人とは全然違う、太い。どちらかというと欧米人みたいだった。
前述の通り、前日の夜に土壇場で書き上げた曲で、本当にギリギリの展開だったのだけれども、
私はこの録音、すごく幸せだったの。
事前に韓国語を勉強する暇もなく、挨拶もまともにできなくて(*しかも当日、頼んでいた通訳の人が現れなかった)
だから当日現場では全く言葉が通じない状態で、この歌の方と二人っきりでスタジオ入ったのね、
それで、、(身振り手振りのジェスチャーのみでディレクションするフリ)、、
こんな感じで一緒にやったのだけれど(笑)、言葉を交わす事もなく、
でも音楽だけで、彼女とこんな曲に仕上げる事が出来て、、それはすごく、幸せな瞬間だった。
ー 素晴らしい話です。前に菅野さんが「わたしは相手の気持ちに触れたくて音楽を作っている」とおっしゃられたことを思い出しました。
そんなこといったっけ?(笑)うん、そうかもね。
聴いてもらえないとそれは音楽ではないと思ってるし、観てもらえないとそれは芸術ではないと思う。
一方通行では成り立たない、心が触れ合わなければね。
ー "Chase the Lady"
・・・こ、これはなんでこんなことになっちゃってるんでしょう(笑)
ー 1曲前と同じ作曲者が作ってるとは到底思えません、、本当にレンジの広い作家さんですね(笑)
これも前田良輔監督かな。
ははっ、ギャーンとかいって!ギターは今堀さんかな。
ー "World you reached" 名曲です、、、問い合せの量もすごかった。
これSONYのね、私もすごく沢山の人から、だれが歌ってるのとか、どのアルバムに入ってるんですかとか、聞かれたよ。
ー 監督は今村直樹さん、ボーカルはアン・サリーさんでした
録音の時、アン・サリーさんが歌いながら「なんて・・いい曲」と言いながら涙を流されていたのが印象的でした。
あ、そうなの?気づかなかった。
アン・サリーさんとはこの時はじめて会ったんだよね。
ー 個人的にはバカラックやビートルズといった、ポップスの金字塔たちの名曲と並んでも全く遜色ないくらい素晴らしい曲だと思います、
こんな曲、どうして書けるんですか?
映像に出て来た犬が可愛かったから。。。母の気持ちになって書きました、みたいな。
ー なるほど。。。30秒・15秒という尺の中で見事なまでに美しく完成された、
CM音楽としての最高到達点のひとつだとも思います
これも、全然力が入っていないような所が私も好きなんです。実際作ったときも力入ってなかったしね。
及川リンちゃんの歌詞もいいし、そしてやはりアン・サリーさんの声の表現力が素晴らしい。
元々、これはアン・サリーさんに歌ってもらう事ありきで作った曲なんです、企画当初、アン・サリーさんがすごく忙しくて、
録音のスケジュールをもらえるかどうかも微妙で、もし彼女に歌ってもらう事が実現しなくて、別の方になってしまったら
こうはいかなかったと思う。なんとかスケジュールとっていただけて、プロモーションの合間を縫っての夜中の録音だったよね。
私にとって歌い手さんとの出会いは本当にかけがえがなくて、、この後、アンさんとはすごく仲良し、
彼女が住んでいるニューオリンズに遊びに行って(*アン・サリーさんはアメリカで医者の勉強をしていた)、
フレンチ・マーケットで一緒にドーナッツ食べて、夜は本場のジャズクラブに何軒か連れて行ってもらった。
アンさんお客さんなのに「ちょっと歌わせてください」といってステージに飛び入りするわけ、勇気あるなーって(笑)すごい人。
ー Wild Fight
あー、ごんぶと!
ー 太そう(笑)
このトランペットはエリックさんかな?(エリック・ミヤシロ/ハワイ出身のトランペット奏者、世界有数のハイノート・ヒッター)
映画っぽいね、スティーブン・セガールの新作みたいな(笑)
ー 強いビートと攻撃的な弦アレンジなのにソリッドになりすぎず、とてもスタイリッシュでポップな仕上がりですね、さすがです。
そうだね、こういうのって、堅いかイナタイか、になりがちだよね。
これも監督は田内さんだったね。
田内さんの手掛けるものは、コマーシャルでもほとんど映画みたい、ギリギリの境界のすごいところをいつも狙ってくる。
エッジが際立っていて、それでいてCMでしかあり得ない垢抜けた明るさもある。
私のCMキャリアの最初の頃、田内さんと組んで作品を続けざまにやった中で、「狙い目」っていう部分に関しては随分勉強させてもらったよ。。
ー "Mambo No.5"
おそらく自分から最も遠いタイプの曲(笑)
(自分の中には)ブラック・ミュージックの血も流れてないけど、ラテンはよりいっそうないと思う、1滴も(笑)。
ー (笑)、にしては随分器用にアレンジ作られてますね、ブラスとか。
そうだね、けっこうそれっぽくやってるね(笑)
(ア~~~ウーッ!っという)このキメの掛け声やってる人はこのためだけに呼んだんだよ、
この人でなくてはダメで、この人のスケジュールに皆が合わせて、これだけなのにけっこうギャラ高い(笑)
マンボってこの掛け声の人が指揮者的な立場で、この人に全員あわせるの。
これは、もう、、自分でもアレンジしながら笑ってる感じ(笑)
ー "Sougen" これも素晴らしい曲、今回初となる音源化は喜ばれる方も多いのではないでしょうか
これも、O.A当時随分問い合せきたよね
やっぱりボーカル、山本千夏ちゃんのこの歌声だよね、、、彼女中学1年生くらいだったかな。
サロペットきてスタジオきてさー、CM初めてだったんじゃないかな。た~まんないよね、これ。
ー たまんないです(笑)この清々しさったらないです。
そう、あとは曲との組み合わせ。
これ実はさ、曲としてはお姉さん向けの曲で、
だからお姉さんが普通に歌っちゃうとわりとノーマルなイージーリスニングになっちゃう。
でもこういうのを、ただただ真っすぐに歌ってるからいいんだよね。彼女じゃなかったらこうは聞こえない。
ー "お弁当を食べながら"
歌(清浦夏実さん)ほんとすばらしい歌い手だね。
歌が別の声だったら、お弁当が匂っちゃいそうだけど、
この声だったからお米の古い匂いがしないというか(笑)
彼女、本業は女優/モデルさん。本人は歌も歌いたかったんだって、かつての今井美樹ちゃんみたいな状況。
声ももちろんいいのだけれども、センスがいいよね
いずれにしても、女優とは信じられないくらい歌上手かったな、私すごく好きな声。
私もこんな声で生まれたかったな、と思ったよ。。。
ー その声もすごくいいと思いますが(笑)。
これまた言葉数多くて難しい詞を、見事なまでにキャッチーできれいな曲に仕上げられてますね
これを聞いて以来、弁当屋の前通ると毎回、"♪おべんとうをたべながら~"と頭の中で鳴ってしまいます
実はすごい歌詞だよね、これを仕上げた時に、私どんな詞でもいい曲書けると確信した(笑)
詞が詞だけにハードルはやっぱり高かったよ。
ー "Share" ラストです。ボーカルはキセル
これね。ジョン・レノンみたいな気分。
ー 幻想的だけどリアルで生々しい部分もあるというか
おはなしの内容が、死んでしまった恋人が~、というものだったから
半分切ない、というイメージで作ったかな。これは詞も込みでアッサリとできたんだよね。
ボーカルのキセルさんは、彼ら自身が現実と夢の間に立っているような、体の真ん中が透明みたいな人たちでしたね。
ー 菅野さんの音楽の魅力のひとつで、リズムの「ゆれ」や、呼吸するような「間」でドキュンとくる、というのがあると思うのですが
そう、確かに。そういうのはやっぱりクラシック独特の「間」の使い方。
ミュージカルもそういうとこあるね 。
逆にポップス畑のミュージシャンにはこれ分かってもらいにくいんだ。
ー 全30曲、ありがとうございました。■■