
ー このCMようこ2を一通り聞くと、
ひと口にCM音楽といっても、ポップスから、クラシック、現代音楽、ロック、ジャズ、ブラックミュージック、ラテン、、、
ありとあらゆるジャンルの音楽のアプローチを試みて作れるという、ある意味、音楽人冥利につきるジャンルですごく自由だと。
うん。でもどんなに自分では素晴らしいと思って出しても、お客さん<クライアント>や同じチーム内の人から、
NGくらうことは少なくない。
映画とか、ドラマの仕事の場合、理不尽なNGはあまりないよ。
CMってまあ、、(制作過程で)なんやかんやとこちらの我慢とやる気を試すようなことをいろいろ言ってくれるじゃない?(笑)
「社長がこの音好きじゃないから、使うな」とか。(笑)
でも、私はそんなおじさまからのイチャモンが大好きなのよ(笑)
企業の偉い人や、会社で毎日一所懸命働いている人たちとか、普段音楽に触れて楽しむことのない方からのシンプルな感想。
あ、この方たちの耳にも届いているんだな、って思えて、ウレシイんだよね(笑)。反応してもらえてる事がうれしい。
ー 菅野さんは多数のCMと、そしてまた多くの映画・アニメの音楽を手掛けられていますが、両者の作り方にはどんな違いが
CMは、例えばテレビ付けて家事してる人の耳にも、一度聞けば残るような引っかかりを心がけて作っているかな。
映画の場合は、そのときどきの時代性を濃くしてしまうと、時間が経って観直したとき古く感じさせてしまい、それが気になって集中できなくなると困る。
CMの場合は逆に思い切り時代性丸出しにして良いよね。ちょっとだけ先にいくくらいのイメージ。
あと、以前は(CMというフォーマットの)この短い尺の中で、0.0~秒も無駄に出来ないって考えて、
沢山の要素を詰め込んでいたんだけど
今は絵の方でもあまりにも情報量が増えて来てしまっているから、あえて音は「間」を作るようにしているかもね。
逆にそうした隙間を作る事によって他のCMに比べ目立たせるような、そんな技術は使っているかもね。
ー ではCMの30秒・15秒だからこそ伝えられることってなんでしょうか
CMって基本的にポジティヴなメッセージであるわけだけど、
でもそのポジティヴな中でも、迷いみたいなものが多少あったりとか
そうかと思えば、ポジティヴを突き抜けてバカになってるものとか、ポジティヴにいきたいんだけどいききれてない、、、とか。
ポジティヴという中でも色んな機微がある、そういう部分に関してはわりと繊細でいたいとおもう。
化粧品のCMとか、完全に演出された世界では、あり得ないほどの前向きさを表現することもあるけれど、
例えばそれこそ「♪お弁当をたべながら~」のような、特に歌ものは、歌手のひと声で情緒を滲ませる事ができる強さがあって、言ってしまうと、たったワンフレーズで心映えや思想を聴き手に射抜くことができたりするんだよね。
同じポジティヴなものでも「セールだ!セールだ!売れてまっせ」みたいなものは、逆に浅ましく感じる。
笑顔を貼付けただけみたいな表現には違和感があるんだ。
「こんなわたしですけど、、、いいですか?」というCMとしては良くも悪くも控えめな(笑)そういうのが私は好きかな。
「いいんですよ、それで。だいじょうぶ」というメッセージを、日々伝えられる仕事、とおもう。
あと、CM音楽って私にとっては子供のような気持ちで取り組む事が出来るジャンルで、
例えば「♪(鼻歌~)」くらいの短いサウンドロゴとか、それを聞いた子供がそのまま口ずさんでしまうような
そうした自分の中のプリミティヴな部分でアプローチできるのが楽しい。
また30秒だからこそ、音楽のあて方の細かな違い、あて所のわずかな違いで全く別の見え方になるという、
そういった意味での突き詰め甲斐もある、実験的なジャンルだよね。
ー CM(音楽)というマスメディア、つまり、何百万人、何千万人という人に届くわけじゃないですか、
その中でなんとなく聞き流している人も入れば、はっと心の琴線に触れて感動してる人もいたり、またエキサイトしたり、、
菅野さんにとってCM音楽ってなんなのでしょうか?
CM音楽に関わることによって、「テレビから菅野よう子の音楽が流れない日はない」って言われる。
何の気なしにTVつけても、街を歩いていても耳に入る、
あーこれ聞いた事ある、って、その人その人の体験の中に積もり積もって残っていくわけじゃない。
その音の中に含まれる情報量の多さたるや侮れなくてさ、、、。
誰が作ってるのか分からないけど、「名もなきメッセージ」が毎日街に流れ出して、
ポジティヴなメッセージをばらまいていくことで、
いつの間にかみんなが「ま・いっか」って言える世の中になってたらいいなっていう、そんな気持ち。
「アメリ」ってフランス映画あったじゃない、ちょっといたずらな魔法を使う女の子がでてくる。
あんな風に、すみっこから皆が幸せになるところを覗いていたい。
とはいえ、ポジティヴであろうぜ、というつもりもさほどなくて、むしろなんでもアリ、自分の好きな事やっていいんだよ
とか、そんな感じの名もなきメッセージかな。私にとってまだまだ遊び甲斐があるジャンルなんだ。
ー 今後もCM音楽づくりはつづけていく?
やりたい。これは私にとって、とても好きな、、、遊び道具なので(笑)。
例えて言うならゲームの宿題出された、みたいな感じなの、、クイズとかね。
そして正解がないようでいて、正解があるんだよね、CMって。
アニメや映画には(特定の)正解はないように思うんだけど、CMってある時一つの正解に辿り着く事が出来る気がする。
ああ、ここだっていう、そこにハマる気持ち良さが、やめられないというか。
ほんとはもっとチャラいのもやりたいの。
この道何年の巨匠になってきてしまうとどうしても、企業広告、とか立派な仕事が多くなってしまう。
でも例えば○○スーパーのお魚売り場とか、そんなのもっとやりたい(笑)
サウンドロゴとか、そういう短いの、わたし大好きなんだよ!"いちじよじー"みたいの(笑)
でも今となっては私にそんな仕事をくださる人はいなくて。。私あんまり巨匠にはなりたくないんだよー。
ー ・・・分かりました、そういう仕事探しときます(笑)
菅野さんの曲書きに関してもう少し詳しく教えてください。自動書記、、
とさきほどおっしゃってましたが具体的にはどんな感じなんですか
打ち合わせ終わって帰りのタクシーの中で書く事が多いね
自分では分からないんだけど、よほど所在なさげな顔をしているのか、
タクシーの運転手さんに突然慰められたりするんだよね、
この人ボンヤリしてよっぽど辛い事があったんだろうな、みたいな感じで(笑)
「どうですか~?」「ラジオでもつけましょうか?」「飴いかがですか?」とかね(笑)
今は結構です!みたいな。
ー チャネリング中ですものね(笑)
作曲といって普通想像されがちな、机やピアノに向かっての創作活動というのは私は全くしない。
それと実際書いてる時間は圧倒的に短い。コネまわしていいことないのは分かってるから、できるまで遊んでるかな(笑)
ー えっ、遊んでて曲書けるんですか!?(笑)
まあ、もちろん締め切り近づいてたりもするから、心の底からは遊べないけど(笑)
早く出来ないかなーって苦しかったりするんだけど、リラックスしようと努めるね。
本読んだりとか、ネコいじくり倒したりとか、お散歩してみたりとか、体操してみたりとか。
買物とか目的のあることはそういう時あんまり意味なくてね、無目的にぼーっとしたり、昼寝したり、よく寝てる。
ー 意外ですね、菅野さんはいつ寝てるんだろう?というくらい多忙なイメージがあります。
カウボーイ・ビバップというアニメに出てくる子供みたいなキャラクターのエドっていうのがいて、
その子は私がモデルになっていると、監督と脚本の方がおっしゃったんだけど、
あれは確かに、、あの態度は私に似てる。基本寝てる(笑)
時々むくっと起きだして、ご飯食べて、わーっと作業して、、、あーもう終わっちゃったつまんないの、みたいな(笑)
あのキャラクターはかなり私の日常を捉えているね、いつ見てたの?ってくらい(笑)。
スタジオでもよく寝るねぇ。
ー CMの時はあんまり寝ないですね
そりゃーやっぱ(笑)、さっきの口紅の話じゃないけど、さすがにクライアントさんの前で寝てたらね、、、サービス業なので。
だからCMの時は一応寝ないように気をつけてる(笑)
ー そうだったんですね(笑)
スタジオではグランドピアノのカバーにくるまって寝るのがお気に入り、
あの表面のシャラシャラした感じと裏面のフェルト地が気持ちいい
それと、人が仕事してる横で寝るのも好き。家に帰ってお布団入って寝るのは別に好きではないね。
ー おもしろすぎます。
最後になります。
近年ではPC、ProToolsやそれに伴うプラグインによる、より安価なDTM環境/自宅録音のハイクリティ可によって
プリプロと本番の差は縮まり、またmyspaceの普及などによってさインディーズシーンの枠が広がり、
より多くのアーティストたちにとって作品を発表する機会は増えてきているように思うのですが、
若い音楽家たちになにかメッセージがあればお願いします
DTM?myspaceってなに?(笑)
そういうことやったことないし、これからも私はやらないとは思うのだけど、
一人だからこそ生み出せる濃密な世界があることは理解できる。
でも私には、自分一人で成立している世界はつまらないし、一方通行は好きじゃない。
誰か別のミュージシャンと一緒に音を奏でたりして、思い通りに行かないところが生まれて、はじめて燃えるんだよね。
ディレクションの話でさっき「掘り出す」というのがあったけど、
それは目標があるという意味で、私がしたい世界をやってもらうためにミュージシャンを呼んでるわけではなく
むしろ、例えばCMの打ち合わせや録音現場で、監督なりミュージシャンなりに会って、そこではじめて生まれるものにすごく賭けている部分がある。
「レコード会社が儲かって自分のスタジオを作るとダメになる」という、業界では有名なエピソードがあるんだ。
決まった機材/ツールの中で作ることは、音楽を狭くしてしまう、ということ。
もしツールがなければ、そのツールになり得るものを探し、
楽器が無ければどれか楽器にならないかって探し、いい人がいなければ誰か一所懸命探す。
そういう風に、あえて身の回りに道具を置いてしまわないように私はしてるんだ。
今はツールさえ用意すれば100円もかからずに自宅で音楽ができちゃって、
ミュージシャンやスタッフを集めて作り上げるというやり方と比べた時に
その差は何かと聞かれると、結局それは言えないんだよ。実際、完成度をみれば、
自宅でみっちり時間と手間をかけて作った方が、クオリティの高いものができるかもしれない。
それでも、様々な人たちとコラボレートすることは、冒険や、その次の可能性とか、出会いによってその後の広がりとか続いていくものだからね。
だから私は人と会うのが好きだし、打ち合わせが好き。
人と接するのは、傷つくリスクがとても高い。歌や音楽ってけっこう丸出しなものだから、否定されたらかなり立ち直れないよ。
傷つかない権利があるのだから、優しい人だけを周りにおいて、その人たちだけに奏でるのもひとつの生き方だとは思う。
でも私は、実は自己否定の気持ちも強くて、他人からの否定は自分のココロの否定に比べれば優しいくらいに感じるんだ。
ほんのちょっと勇気を出せば、世界が広がるよ。
自分の絵の具を用意してしまわないほうがいいと思う、どれも絵の具になると思ってさ。
なにも持たずに出かけていって、その場にあるもので絵を描くというかね。
私はそういう風に生きていたいと思う。■■
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ー なんと日本では相当久し振りとなるシートベルツのLiveがあるということですが。
CMソング集のコンサートではないのですが、
7/7(火)にさいたまスーパーアリーナでやります。
グランドファンクのみなさんは全社あげて韓国公演きてくれたものね。そのなんたるかを宣伝しといてください(笑)
ー 2007年の(オンラインゲーム"ラグナロク2"にかけての)韓国公演、本当にすごかったです。
何遍も何遍も鳥肌たって、そのまま風邪引いてしまうかと思いました、本当に。
ぼくの隣に座ってた韓国人の女の子はほとんど最初っから最後まで泣きっぱなしでしたよ、
マイケル・ジャクソンのコンサートかっていう(笑)
菅野さん以下、バンドの演奏力はいわずもがな、、華々しい舞台演出から、細部に及ぶプチエンターテイメント、
永ちゃんばりの大掛かりな仕掛け(笑)、支離滅裂・奇想天外な展開から感動的なエンディングまで延べ3時間30分、
全く飽きることなく目が離せませんでした。
今回も予測を遥かに超える菅野さんの250%の演出に完全にド肝を抜かれること間違いないでしょう、
1音楽人として世界中の音楽ファンにオススメします。ベット・ミドラーよりも、歌舞伎よりも!まだ観たこと無いですが(笑)
韓国の時は半分くらい知らない曲だったでしょ?
今回はみんな知ってる曲ばっかりやるから
しかも本物たちがきて本人たちが歌いますからね。
観に行ってよかったと必ず思っていただけるものになります、楽しみにしていてください。
平日なのでお客さんは来にくいかと心配ですが、
会社やめてきてね。
ー いや、会社辞めなくても、、、いけると思います(笑)
間違えた、会社早退しても、ね。まあでも普通の人は会社休めないじゃない。
イベンターさんの話ではこれまで日本人アーティストでさいたまスーパーアリーナを平日に満員にした人は未だかつて1人もいないと。
ー では、その1人目のアーティストに是非なってください、菅野さんだったらなれるのかと。
もしそうなったらすごいね。■■
取材/文:富永恵介(GRANDFUNK Inc.)
写真:飯島(GRANDFUNK Inc.)